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研究報告「日本初のスキーリフト」(藻岩レルヒ会)原田廣記
2013.05.28
■■■「日本初のスキーリフト」藻岩レルヒ会・原田廣記■■■
日本で初めてのスキーリフト(スキートウ)が設置されたのは、戦後の進駐軍から国内に2箇所を作るようにと指示が出され、長野県志賀高原の丸池スキー場と北海道札幌市の藻岩山スキー場に決まり、昭和21年8月に進駐軍のリフト建設担当のウォースレーヤ少佐が、北海道庁に「クリスマスまでに完成せよ」と命じたことから始まった。
藻岩山は保安林で天然記念物の伐採は無理であったが、同少佐は最小限にすることに同意し、(今では伐採ができないが)北海道庁は、スキー場に適した場所として藻岩山(531m)の北斜面を稲妻型に森林を伐採してコース作りの工事を開始した。コース横には第1スキートウ(リフト)の支柱を11本(木製)と原動車・折り返し滑車を取り付けた。複線式の空中索道で長さ983mに44個の二人乗りの搬器で1時間当たり100人の輸送能力があった。第2スキートウ(リフト)も山頂まで取り付けられた。北海道庁の土木部には、後に北海道知事になった堂垣内尚弘氏が中心になり着工し、昭和21年に完成した。
藻岩山の進駐軍スキー場図
このスキー場は、進駐軍専用でクラブハウスも将校用と下士官用の2箇所があった。しかし一般市民は利用ができなく、ただ便利なものだと見ているだけであった。スキー場の入り口には、MP(ミリタリーポリス)が銃を肩から提げて検問をしていて、スキー場にはアルペンコースのほかジャンプ台やトボーガンコースも設置されていた。
支柱は、鉄骨がなく木製の支柱で滑車がつく部分は鉄骨でできていた。支柱の高さは一番高いところで18m、低いところで7m、乗り場から降り場までの高低差は164mであった。リフトの搬器(チェアー)は二人乗りであったが、今のように横に並んで前向きに乗るのではなく、二人は進行方向と反対方向に背中合わせで乗る方式であったため、スキーを持っての乗り・降りの時は後ろ向きの乗員は注意をしなければならなかった。
トボーガンとコース
トボーガンコースは第1スキートウの横にあり、トボーガンは大型の木製のソリに3人〜4人が乗り、雪で固めたコースを秒速30〜40mで滑走するもので、ソリにはハンドルやブレーキは付いていないものであった。
コースは全長1400mで、減速区間や100mの停止区間が設けられていた。幅は3m〜5mでコーナーでの傾斜をつけた。
スキーコースの中腹にはシャンツェ(ジャンプ台)も設置され、北向きに飛躍距離20m級のシャンツェがあった。
スキー場には、山麓に将校用のロッヂ(66坪)と下士官用のロッヂ(77.5坪)があり、館内には料理室・乾燥室・ポーチ等もあり、管理人室は地下にあった。外壁は半丸太と軟石で、室内は電気照明・防寒水洗トイレ・乾燥用電気炉も備えた英国風な造作になっていた。昭和22年から「進駐軍専用スキー場」として運用が始まり、昭和28年頃からは一般のスキーヤも利用することができるようになり、進駐軍が撤退したあとは「札幌スキー場」と名前を変えて競技大会などに使用されるようになった。
現在もあるスキートウの原動台座
昭和33年の「スキー国体の会場」となったのを最後に使用が禁止され、昭和34年、裏側の東斜面に新設された現在の「藻岩山スキー場』に引き継がれた。現在も当時の「第1スキートウ」の跡を見ることができる。藻岩山の慈恵会側登山口から約1.5?の登山道近くに広場があるが、そこが「第1スキートウ」の降り場でコンクリート製の山上原動台座として現存している。また、稲妻型のスキーコースも藻岩山の山頂からは、その部分がコースであったことが55年後の今日でも植栽の跡から見ることができる。
スキートウ引留台
当時リフトの原動装置は山頂にあって、ロープの調整は山頂でしていたので動力の引きとめ台が山頂にある。
山麓の滑車は折り返し車で固定されていた。
藻岩山原始林 ※大正10年3月3日(天然記念物)指定
北海道で第1号の天然記念物に指定された。
藻岩山には約70種類の樹木があります。
(カツラ・ハルニレ・キタコブシ・ヤナギ・ヤチダモ・シラカバ・センノキ・サクシバ・ミズナラ・トドマツ・エゾマツ・ハルギリ・イチイ・エゾイタヤ・オオバボダイジュ・エゾヤマサクラ・カエデ・カツラ・ナラ・オニクルミ・等など)
土木学会誌第32号目次(昭和22年8月)
【資料出典】
(1) 土木学会誌「新設札幌スキー場について」昭和22年8月
(2)安全索道株式会社ホームページ
(3) 毎日新聞記事「日本初のスキーリフト」平成24年4月
(4)国土地理院(昭和22年航空写真・昭和36年航空写真)
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